『CACANiセミナー』(第2回)アフターレポート
2015年8月22日(土)に、株式会社ワコム 東京支社で開催された
『CACANiセミナー』(第2回)の模様です。
wacomの轟木保弘氏に通訳と司会進行を担当していただきました。
終了後、有志の皆様が居残って、自主的にディスカッションが行われました。
株式会社ワコムの協力で、
CACANi Private Ltd からリ・ホンツェ氏を講師に招いて、
動画中割り支援ソフトのセミナーを開催しました。
今年2月のACTFで紹介されて以来注目されているソフトで、
手描き2Dアニメーションの制作現場で本格的に動画の中割りを支援するソフトウェアとして期待が高まっています。
すでに実業務に導入を試している方から初めて見るという方まで、
職種ではアニメーターや動画チェック、仕上げ、制作進行などといった熱心な聴講者が集まりました。
原画トレスから彩色までの作業工程に沿ってソフトの使い方が、ホンツェ氏自身の実演を交えて丁寧に説明されました。
特に、中割作業の支援機能については細かく説明されましたが、聴講者からは原画の読み込み機能など、
実際の作業フローを想定したより実践的な質問が相次ぎました。
CACANiは、数十枚の中割りもほんの一瞬で作成しますが、いくつかの制限もあります。
ひとつは、A→Bの中割りを作成する場合、AとBの書き順は同じでなければなりません。
書き順が同じでないと絵が変形したりひっくり返ったりしてしまいます。
すでに描いてある原画をスキャン(この時点でラスターデータ※1)して
CACANiで使えれば便利だという質問があり、
ホンツェ氏がスキャンした原画をCACANiで利用できるデータ形式にするため、
ベクターデータ※2に変換して解説をされました。
結論としては現時点でうまくいかないとのことでした。理由は、Illustratorでベクターデータに変換したのですが、
線がものすごく細かく(100本以上)分解され複雑になりすぎてしまうことと、“書き順”を同じに出来ないからでした。
ホンツェ氏は、この処理について、現在開発中で、どのようなプログラムが一番現実的か検討中であると話をされていました。
終了後の有志による交流の場では、聴講者のりょーちも氏の呼びかけで、さらに実務的なディスカッションが、
ホンツェ氏を交えて行われました。シンガポールのメーカーであるCACANiが、
どこまで日本の制作環境への対応を考えてくれているのか、といったより踏み込んだ質問も相次ぎました。
ホンツェ氏は、2月のACTFで講演したときに会場を見て、日本には市場性があると思ったそうです。
しかしながら、会社全体としてコンセンサスがある訳でななく、
北米やヨーロッパ市場を重視するべきとの意見も社内にはあり、
現在は市場戦略を見定めているところですとのことです。
結果として、2時間講演+約2時間のディスカッションととても密度の濃いセミナーとなりました。
※1 ラスターデータ:画像のデータ形式のひとつで、画像の内容をひとうひとつの点で記録している。比較的処理しやすいデータ形式だが、ファイルサイズが一般的に大きくなる。
※2 ベクターデータ:画像のデータ形式のひとつで、画像の内容を数式で記録している。すべての画像は、点の座標とそれを結ぶ線で表わされる。拡大・縮小しても画質が損なわれないなどの特徴を持つが、写真のような複雑な画像を表現する場合かえって処理が重くなる。