■プレスリリース

インボイス制度への懸念に関する意見表明

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プレスリリース: インボイス制度への懸念に関する意見表明(pdf形式)

一般社団法人 日本アニメーター・演出協会 理事会

 日本アニメーター・演出協会(JAniCA)理事会は、来年10月の運用開始が予定されているインボイス制度(適格請求書等保存方式)に関し、 下記のとおり、現在公表されている制度の運用には看過しがたい懸念があるため、反対します。

1 クリエイターや小規模事業者に過度の事務負担を生じること
 アニメ制作者の多くは個人事業主たるフリーランスであり、そのほとんどは前々年度の課税売上高が1000万円未満の免税事業者です。 インボイス制度導入後、取引先の制作会社などから「仕入税額控除」ができないことを理由に不利益な扱いを受けるおそれを避けるため、 課税事業者となる選択を迫られることとなります。しかし、現在予定されている制度では、アニメ制作業務に少なからず 見受けられる3万円以下の少額取引にも適格請求書等が必要など、アニメーターや演出などアニメ制作者のみならず、 制作会社にとっても新たに相当の事務負担が発生します。これは、行政負担の簡素化やDX化の流れにも逆行するものです。 日本税理士会連合会(注1)も提言されているとおり、簡易で安価な制度が整備されるまで、 例えば現状の経過措置(免税事業者からの仕入は全額控除可能)を継続する等の措置を希望します。

2 税の公平に反すること
 インボイス制度導入は、2019年10月の消費税法等改正により、軽減税率が導入されたことによるものです。 専ら一部業種にのみ恩典の及ぶ軽減税率導入により、業種に限らずひろく認められていた事業者免税点制度が実質的に廃止されることは、 税の公平という大原則に反する不当なものです。

3 アニメ制作の現場環境を悪化させること
 アニメ産業は活況が伝えられますが、アニメ制作の現場を担う制作会社の半数近くは赤字(注2)です。 利益なき繁忙にあって、制作会社の多くは課税事業者か否かに関わらず、取引を継続せざるを得ないと思われます。 インボイス制度はアニメ制作者のみならず、アニメ制作者と共に現場を支える制作会社をも運用コスト及び税負担の双方で痛めつけ、 制作現場の環境を悪化させます。

以上

(注1)「令和5年度税制改正に関する建議書」2頁
(注2)帝国データバンク「アニメ制作業界」動向調査、2021年8月2日