■プレスリリース

「京都アニメーション」放火事件の犠牲になった方々に寄せて


 凄惨な事件から2週間あまりが経過しました。京都アニメーションと事件に関して、今現在に思うところを記し、お伝えしたいと思います。

 京都アニメーションの優れた表現、リアルからコミカルまで幅広い表現を高い完成度で実現している映像を見たとき、とりわけ「キャラクターの感情を伝える映像」や「そこにキャラクターが存在していると感じられる映像」を見たとき、「これは全てのセクションが優れていないと達成できない」と強く感じます。同時に、生み出される作品の多さと、それら全てが優れている事から見ても、ひとりの天才だけによって生み出されているのではなくスタッフ全員が高い能力を持っている事は明らかです。
 その通り、コンテ・演出・原画・作画監督・動画・彩色・背景・撮影・制作管理と、およそ映像に関係する全てのセクションが優れているのが京都アニメーションです。
 京都アニメーションは設立より40年、人を育てる事に力を尽くしてきたアニメ制作会社であり、実際多くの優れた人材を育て続けてきました。育てたのはベテランの方々であり、彼らに鍛えられ、彼らと共に優れたアニメーションを生み出してきたのが若い世代の方々です。この層の厚さが京都アニメーションの素晴らしさです。
 しかし、「層が厚い事」は「替えがきく事」とイコールではありません。個々のスタッフはそれぞれに個性を持ち、各々でないと成し得ない独自の表現を持っていると感じられました。年齢層だけでなく多様性においても層が厚いのです。
 その35人の個性が失われました。
 これからも多くのアニメーターを育てるはずだったベテランの方々、これから開花し、間違いなく30年40年に渡って素晴らしいアニメーションを生み出すはずだった若い方々が、多く亡くなられました。悲しいという言葉だけでは表現できません。
 彼らが次にどんな表現を見せてくれるのか、それを同業者ながら楽しみに思っていました。失われた経験、閉ざされた未来を思う時、あまりにも大きな喪失であると感じます。

 今はただ、亡くなられた方々のご冥福を自分に出来る方法でお祈りする事しかできません。しかしこの後、故人一人ひとりの生きた証しをご紹介する機会がありましたら、その実現に向け積極的に協力していきたいと考えています。

一般社団法人 日本アニメーター・演出協会(JAniCA)
代表理事 入江泰浩