■下請法

アニメーション制作が下請法の適用対象例に追加されました

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 平成28年12月14日に改正された 「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」に、 アニメーション制作に関する事例が新たに追加されました。

公正取引委員会
(平成28年12月14日)「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正について
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h28/dec/161214_1.html

 下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは、下請取引を公正なものとし、 下請事業者の利益を保護することを目的とした法律です。具体的には、 取引条件などに関する書面提供や対価の支払期日の明示などを義務づけ、 不当な受領拒否や支払いの遅延、代金の減額や報復措置など、 いわゆる下請けいじめを禁じることが定められています。違反した場合には、 公正取引委員会による調査を経て、公表をともなう勧告措置などの法的制裁があります。

 下請法は多くの場合、アニメーション制作にも適用されます。しかし、 下請法の運用について定めた公的なガイドラインとして、 「下請法の対象となる取引例」や「違反行為事例」を定めた 「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」にはこれまで、 アニメーション制作に関する記載がありませんでした。

 下請法はアニメーション制作に関わる仕事の全てに適用されるものではありませんが、 アニメーション制作に従事する個人のみならず、 アニメーション制作を業とする法人(いわゆるスタジオ、制作会社など)にとっても、 下請法の適正な運用は、未だ不公正な取引の多い現状を改善するための第一歩となりえます。

 JAniCAは10月26日、下請法の運用基準改正案に関するパブリックコメントが開始されたことを受け、 アニメーション制作を下請法の適用対象として明示し、 違反事例に追加するよう求める意見を提出することとしました。

※ JAniCA理事会の提出意見
一般社団法人日本アニメーター・演出協会
「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の改正に関する意見


 そして、12月14日に公開された改正運用基準に、以下引用のとおり、 10月26日に示された改正案には記載のなかった アニメーション制作に関する記述が追加されたことを確認しました。

第2 法の対象となる取引
「アニメーション制作業者が,製作委員会から制作を請け負うアニメーションの原画の作成を個人のアニメーターに委託すること。」

第4 親事業者の禁止行為
(その他の受領拒否)
「親事業者は,継続的に放送されるアニメーションの原画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,視聴率の低下に伴い放送が打ち切られたことを理由に,下請事業者が作成した原画を受領しなかった。」
(その他の買いたたき(3))
「親事業者は,アニメーションの原画の作成を下請事業者である個人のアニメーターに委託しているところ,親事業者の要望を反映させることにより作成費用が当初の見積りよりも割高となることを理由に下請事業者から下請代金の引上げを求められたにもかかわらず,そのような費用増を考慮することなく,当初の見積価格により通常の対価を大幅に下回る下請代金の額を定めた。」
(その他の発注内容の変更・やり直し(3))
「親事業者は,アニメーションの動画の作成を下請事業者であるアニメーション制作業者に委託しているところ,親事業者が内容確認の上,完成品を受領したにもかかわらず,プロデューサーの意向により動画の品質を引き上げるための作業を行わせ,それに伴い生じた追加の費用を負担しなかった。」


 そのほか、公正取引委員会より、アニメーション取引に関する法の適用に関して、以下の考え方が示されました。

アニメーションの制作については,テレビ局や製作委員会等の発注者から,元請制作事業者, 下請制作事業者へと再委託が行われる重層構造にあり,再委託を受ける事業者は小規模事業者が多く, 元請事業者から不当なしわ寄せを受けやすいと考えられます。このため,御意見を踏まえ, アニメーションの制作に関する情報成果物作成委託の取引例として,「第2法の対象となる取引」において次の事例を追加しました。
(中略)
また,アニメーション制作の取引において下請法違反行為が見受けられた場合には,迅速かつ効果的に対処してまいります。
下請法の対象とならない取引であっても,独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる行為に対しては,厳正かつ効果的に対処してまいります。
低賃金や長時間労働の背景に親事業者による下請法違反行為がみられる場合には,迅速かつ効果的に対処してまいります。

 JAniCA理事会はこの運用基準改正を契機として、製作委員会などの発注者と元請制作会社、 元請制作会社と下請制作会社など、これら制作会社と個人のアニメーターや演出など アニメーション制作に従事する個人事業主、 アニメーション制作に関する一連の取引を適正化し、 長年に渡って指摘され続けてきたアニメーション制作現場の 環境改善を進められることを強く希望いたします。

 なお、運用基準改正への意見提出までには、先にご報告した経済産業省 「アニメーション制作業界における下請適正取引等の推進のためのガイドライン」事業への 井上俊之代表(当時)の参加などの積み重ねがありました。 この事業を受けて改正されたガイドラインには、 下請法に関する問合せ・相談先なども記載されています。是非ご活用下さい。

アニメーション制作業界における下請適正取引等の推進のためのガイドライン(平成28年7月改訂)
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/guideline.pdf
※ 問合せ・相談先は80頁・81頁

平成27年度「コンテンツ産業強化対策支援事業(アニメ下請ガイドラインフォローアップ等調査事業)」調査報告書
http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/houkokusyo.pdf

 また、運用基準改正への意見提出に際しては、10月26日に開催された理事会に オブザーバー参加された山田太郎・前参議院議員から貴重なご提言をいただきました。 山田前議員は、7月の参議院選挙に際し、 JAniCA理事会として推薦させていただいたことへの御礼に来られたものです。 今回は惜しくも落選となりましたが、29万票余と極めて多くの票を集め、社会的にも注目されました。 山田前議員からは、寄せられた期待に応えるためにも、 次回選挙での国政復帰に向けて政治活動を継続していく旨、ご報告がありました。


■担当者/JAniCA事務局 (postmaster@janica.jp)
本件に関するお問い合わせは、 JAniCA事務局(postmaster@janica.jp)までお願いいたします。